読書体験

 もはや老眼が進み読書が覚束なくなって来ているが、原点ともいうべき小学生時の読書体験が忘れられない。

 一回一冊しか借りられないため速読して翌日返す。しかもすぐ読み終えるのはつまらないからなるべく分厚い本を借りる。借り出し時に立ち読みして面白いかを見極める鑑定眼と速読術が鍛えられた。人に、そんなに飛ばして読んで実は分かってないんだろうと本の中身を試されて詳細を言い返したことがあった。

 読書の分野は歴史物、SFが多かった。歴史物は登場人物が多いほど多様性に惹きつけられた。SFは特に読み進めるうちに脳内で映像が爆発した様に結実する感じだった。歳をとりその時のような鮮やかな体験はもはや無い。というかほとんどSF読んでない。先日書評を読み韓国作家のSF読んだのが久しぶりのことだった。

 小学生の時の速読術を取り戻したくて40過ぎてからまた読書を趣味とするようになった。でも雑念が多くて昔のような集中力が取り戻せたかは疑問だった。

 後日母校に立ち寄る機会があり図書館を覗くと、あのSFたちが並んでいた。校舎はもはや建て替えられていたのに、当時は新品だった本との20年を経ての再会には興奮した。昔の感動が映像と共に蘇った。そしてまた20年以上が経っている。あの本たちはどうなったかな。